OPTI-COLOR マルチ/VC システムの精度について

オプテイカラー ローター回転式粘度コントローラーの制御精度について語るときには、まずこのシステムの原理をよく理解しておいていただく必要があります。

目次:
[1.システムの作動原理] 
[2.システムの持つ分解能と繰り返し特性] 
[3.マルチVC 周波数変換型 コントロール システムの制御能力]
[4.粘度コントロールの精度を阻害する要件]
[5.周波数変換型マルチVCシステムが可能にする広範なアプリケーション]
[図表:設定条件によるパルス出力値]


1.システムの作動原理
回転式ローターのついたセンサーからは、粘度の変化に応じて一秒間に200 〜0パルスのデジタル信号がコントローラーに発信されます、但し モーター が無負荷状態における基準パルスは、198.7±0.7hz(入力周波数50 hz)です。
オプテイカラー社では、お客様が使用されている計量カップ(例えば離合社 ザンカップ#3)でいろいろなレンジの標準校正液(シリコンオイル)を計っ た秒数によるデータと、その同じ液をシステムで計測し、読み出されたパルス 数との相関関係(例えば、 R#3=16秒 = 191.6hz)をEPROMに データとして書き込み、 読み出されたパルス数を、秒数に変換して表示、 また希望粘度設定値として使用するようになっています。 従って、この システムが最大限に能力を発揮出来るかどうかは、お客様が使われている計量 カップ自身が溶液の粘度変化に対応してどのような特性カーブを描くことが 出来、どれだけ正確な再現性を持っているかがひとつの大きな要件と言えます。
作動原理の画

2. システムの持つ分解能と繰り返し特性

標準タイプのローター高速回転型センサー(OBD/1-P)は無負荷状態では 50hzすなわち1分間約3000RPMで回転し、この時基準値として 198.7 ±0.7hzのパルスを発信しており、粘度上昇に伴ってより 低いパルスを出力します。 この時ニュートニアン溶液であるシリコン校 正液を計測した場合の繰り返し性能は、0.1〜0.2hzであり、高速回 転型センサーは通常160〜200hzの粘度領域で使用しますので、この 場合の分解能は40ステップ/(0.1ないし0.2)、すなわち0.25〜 0.5%の分解能を持っているということが出来ます。 しかし生産現場 での使用に際して、粘度管理の基準を、日常使われている計量カップの秒 数に置く場合この分解能をどのように生かせるかは、そのカップそのもの が持つ特性に依存すると言うことは最初の項.1で述べた通りです。

また、実際の生産現場で粘度管理の対象となる溶液はほとんどの場合、高 分子化学により生み出されたインクやペイントなど、非ニュートニアン液 であり、粘度変化の特性は必ずしも直線的ではなく、またチキソトロピッ クな性状が、その溶液の流動状態によって物性を大きく変化させ、粘度が 変化するなどの不安定要素を多かれ少なかれ内包しています。

OPTI-COLORの高速回転型OBDセンサーが通常、160から200hzのパルス 領域内で使われるというのはこの事と関連しています。 すなわち、この センサーは10〜500mPas(CPS)という低粘度から中粘度溶液の正確な 粘度管理に適していると言えるのです。 その理由は、粘度の高い非ニュ ートニアン液の中でセンサーが高速回転する時、そこに高い煎断応力が働 き、溶液の物性変化をより大きくさせます、またセンサーの回転スピード とトルクのバランスが悪くなることで、読み出すパルス値の繰り返し特性 が悪化し、システムの安定性を損なうようになるためなのです。

回転ディスク図解
生産ライン上での溶液は、ローラーによって練られるなど必ず一定の流動 状態にありますから、その条件に近い状態で計測できるローター回転 型センサーの信頼度が最も高いと言えるのですが、すべての粘度領域に常 に同じ回転数固定型センサーを適用できる訳ではないと言うことが、この ことでご理解いただけると思います。
3. マルチVC 周波数変換型 コントロール システムの制御能力
オプテイカラーの粘度コントローラーが持つ制御精度についてたずねられ た場合、前項で説明したように使用される条件やアプリケーションの内 容により差があるものの、全般的に1%以下の精度が出るということを言 って差し支えはありません。 またそれは使用条件を改善する事でより高 める事も可能です。 しかしながら1000mPasを超えるような溶液の粘 度コントロールには、もはや高速ローター回転型のOBD(1ーP)センサー をおすすめすることは出来ません。 そこでこれらの粘度領域を広範に、 しかもより高い制御能力を発揮できるように開発されたのが、マルチVC 周波数変換型 コントロール システム( MVC/MR )なのです。

このMRシステムには、マルチVCコントローラーの他に入力周波数を安定さ せ、センサーに出力する周波数を制御するための周波数コントローラー (MR)を使用します。 またセンサーのモーターは従来の単相モーターと 違い新設計の3相ACモーターが採用されており、より広範なトルク変化に 対応できるようになっています。

このシステムでは、センサーの回転速度を150から3000rpmまで (2.5〜50hz)の8段階に設定、同時にトルク値を30〜100%まで10 %刻みで設定出来るようになっており、しかも入力周波数を高いレベルで 50HZに安定させますので、入力周波数が不安定になりがちな使用条件、 例えば船舶での燃料油のコントロールなどに、より安定した性能を発揮す ることが出来ます。また、低い粘度領域にあっても、従来の高速回転型セ ンサーではローターによる煎断や泡の発生などによる悪影響の懸念される 溶液に対しては、それに適した、回転/トルク領域を選ぶことが出来、ま たインラインセンサーを使用する場合などで、溶液との摩擦で回転部の早 期磨耗が懸念されるようなケースにも低い回転領域を選ぶことでより良い 結果が得られます。

このシステムでは、従来の方式と違い、センサーからの発信パルスは一旦 周波数変換器(MR)で2500hzまでに増幅され、そこから0〜200hz のシグナルに変換されますので、どの領域の設定に対しても等しく、高い 制御性能を発揮する事が出来、また別表のように現在シリコン校正液を基 準にした、 1〜60、000mPas(CPS)の数値を得ることも可能になり、 生産現場のみならず、ラボでの精密なデータ管理機として使用していただ く事も可能になっています。


4. 粘度コントロールの精度を阻害する要件
前項で述べたように、マルチVC システムは溶液粘度範囲を400から最 高2000ステップに分解して粘度変化を読み出す能力を持っていますが、 実際の生産現場でそれが100%コントロール精度に結びつく訳ではあり ません。 下表に見るようにラインにかかるいろいろな条件がその阻害要 因となります。 現状の問題点を一つ一つ洗い出し、それらに適切な対策 を施してあげることが粘度コントロールで高い成果をあげるための重要な ポイントであり、マルチVC システムにはそれを可能にするいろいろな 補助機能が含まれています。
阻害要因 問題点 対策方法
センサーの汚れや不良 精度の低下、
表示のバラツキ
センサーのクリーニング、表
示の校正、修理
タンクのサイズ、液料、循環にかかる時間 精度のバラツキ スイッチ タイム 機能の設定
タンク内レベルの大きな変化 精度のバラツキ バイパス タンクの使用
レベル計の設置
溶剤滴下量の過不足 精度のバラツキ スイッチ タイム 機能の設定
溶液の撹拌不足 精度のバラツキ ミキサーの使用
スイッチタイム機能の設定
溶液の粘度範囲が広い 精度のバラツキ 適切なスケールの設定
スイッチ タイム 機能の設定
環境や溶液の温度 精度の低下、
表示のバラツキ
溶液の温度コントロール
溶液の流動状態にムラがある 精度の低下、
表示のバラツキ
ミキサーの使用
センサー パラメーターの設定
溶液の過大流 精度のバラツキ バイパス タンクの使用
計測タイム 設定
溶液の泡立ち 精度のバラツキ 消泡対策
バイパス タンクの使用
溶剤の過度な揮発
溶剤と溶液の混合不良
精度のバラツキ 密閉型タンクの採用
適切なミキシング

5. 周波数変換型マルチVCシステムが可能にする広範なアプリケーション
添付した別表の内容を詳細に検証すれば、このシステムが持つ高度な機能 と可能性を容易に理解していただくことが出来ると思います。 1mPasという水よりも粘度の低い液体から、ほとんどモーターが停止する ような60,000mPasというペースト状溶液まで、同じような繰り返し精度を もって計測する事が出来ます。 また溶液が持つ固有の物性や対象となる 粘度範囲に応じて最適なセンサー回転速度とトルクを自由に設定していた だく事が出来、従来正確な粘度値を知るすべを持たなかったユーザーが、 独自の自己スケールを設定する時、非常に有効な手段となります。
アプリケーションのページ

OPTI-COROR マルチVC 周波数変換型 コントローラーによる
粘度変化(mPas)とセンサー周波数/トルク 設定条件によるパルス出力値

計測対象溶液:シリコン オイル標準校正液
センサー  :MTD/MR(ディップ型 3ーP)
センサー ディスク のタイプ : 29x30 mm

粘度(mPas)50Hz
100%
50hz
40%
30hz
80%
30Hz
40%
10Hz
80%
10Hz
40%
5Hz
80%
5Hz
40%
2.5Hz
80%
2.5Hz
40%
1193.6154.7195.6183.1197.3189.0197.3185.1196.8177.7
50178.059.0185.9141.3193.2177.9194.5179.3194.5172.2
100167.846.5178.7105.5189.5168.2191.7171.4193.0168.6
350123.323.9153.965.2179.0144.0182.4149.6183.3146.1
100068.09.4106.226.9157.0100.2161.4111.8160.3110.2
500013.01.822.55.074.525.084.534.886.536.1
30000  3.3 15.03.919.05.720.45.9
60000  1.6 6.5 9.2 10.2 

繰り返し精度50Hz
100%
50hz
40%
30hz
80%
30Hz
40%
10Hz
80%
10Hz
40%
5Hz
80%
5Hz
40%
2.5Hz
80%
2.5Hz
40%
10.10.30.10.10.10.10.20.11.00.5
500.10.10.10.20.10.10.10.10.50.2
1000.10.20.10.30.10.20.10.10.50.2
3500.10.10.10.10.20.20.30.20.50.2
10000.20.10.10.10.20.20.30.20.40.1
50000.20.20.30.30.30.50.50.30.50.2
30000  0.1 0.20.20.30.20.30.2
60000  0.1 0.1 0.2 0.2 

グラフ